【02】家賃滞納に対してオーナーが知っておくべき税務上の注意点
新型コロナウイルスの影響が長引き、家賃の支払が困難な人が増加しています。NHKの調べによると全国36の自治体にアンケート調査したところ、仕事を失った人など家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度「住居確保給付金」の申請件数が今年4月から7月までの4か月間で5万件近くとなり、前の年の同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分かりました。
賃貸住宅オーナーにも新型コロナウイルスの影響が今後出てくる可能性が高くなってきました。
オーナーの税務上の注意点としては、滞納家賃の税務上の取り扱いです。
滞納家賃は、入金がありませんがその年の不動産所得に算入されて所得税・住民税の対象となります。特例として、現金主義会計を適用している場合には実際に入金された家賃だけ計上し、滞納分は計上しなくてよいものとされています。
現金主義会計を採用するには以下の要件を満たす必要があります。
①青色申告者であること。
②その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(青色事業専従者給与及び事業専従者控除の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下であること。
③事前に税務署に届出を提出していること。
現実問題として現金主義会計を採用している小規模のオーナーは少ないので、結果として滞納家賃も売上となってしまいます。
オーナーの税務的な希望としては、事実上回収不能となった滞納家賃は早期に貸倒損失として落として税金を安くしたいのが心情です。しかし、きっちりと手続きを踏まないと税務署はそれを認めてくれません。
具体的には滞納状況が下の3つのいずれかに当てはまれば貸倒損失と認められます。
①法律上の貸倒損失・・・会社更生、民事再生、破産、滞納家賃の債務免除を書面で通知されたなどの法律上の貸倒れがあった時。
②事実上の貸倒損失・・・借主の資産状況や支払能力などから見て、回収できないことが明らかになった時。(借主の個人資産の把握が必要。)
③形式上の貸倒損失・・・借主が部屋を出て行った後、1年以上経過している場合で、滞納家賃の回収にかかる費用がそれを上回る時。
滞納者のほとんどは、そのまま居座るか行方不明などのケースです。したがって、行方不明の場合は、その事実が発生してから1年以上経過してから形式上の貸倒れで処理することができるでしょう。また居場所はわかるが回収可能性がないような場合は、借主に対して内容証明で債権放棄を通知して法律上の貸倒れで処理するということが有効です。
税務調査時には必ず問題になりますので、滞納者への回収手続きの経緯、結果債権放棄に至った内容証明郵便などはしっかりと保管しておいてください。
ただし個人の※事業的規模ではないオーナー様に限っては、その年の貸倒損失とはできず、家賃収入計上の年度まで遡って更生の請求という手続きが必要となりますのでご注意ください。
滞納が多く発生する経済状況下では、オーナー様は家賃保証会社などを事前に利用し滞納トラブル回避や収入の担保をするという事前行動も重要な時代になってきましたね。
困ったときは不動産経営に詳しい税理士にご相談ください。
不動産経営に詳しいと自分で言ってしまう税理士法人ほはば代表の前田が執筆いたしました。
※事業的規模とは
●貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
●独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
●明確な基準はありませんが、駐車場の場合5台で1室と計算されます。
PROFILE
税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)
2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。
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