【03】不動産経営について引退を考える。
昔からの地主さんタイプの不動産賃貸業であれ、いわゆる不動産投資家であれ年齢を重ねられるにつれ、いつバトンタッチするか手仕舞いするかの引き際は難しいものです。
よく『引退は、いつ頃が適切ですか?』と聞かれます。
不動産賃貸業には定年といった概念がありません。それ故に、事業を引継ぐタイミングを見失ってしまうのも事実です。
引退時期は、いつがベストかというとそれは遺す者、受継ぐ者の考え・状況・資質により様々です。ただ、言えることは、準備は早いほうがいいということです。
では準備とは何か整理していきましょう。
① まず財産・債務の棚卸しをする。
不動産はもちろん、有価証券・預金・生命保険・銀行借入などを書出して表などにまとめることです。突然相続が起ると自分以外何も知らないと受継ぐ者は、たちまち困ります。ただ、あまり生前に伝えすぎないことも大事です。大きな財産は子供の考えを甘くしてしまうこともあるためです。
② 相続税の試算をする。
まだ先とは言え、今もしものことがあればいくら資金が必要かは、受継ぐ者からすると一番の不安要素です。これを払拭しておくためにも、また納税するには資金不足であるなら、相続税を減らす対策も事前に着手できますし、残す物件・売却してもいい物件(不動産会社に査定などをとりこれぐらいでは売れるという認識を持つ。)を一番知っているご自身が事前に考えられるからです。詳しい計算は、専門家にさせればいいのです。
③ 受継ぐ者と時間をとって対話する。
一番難しいかもしれませんね。特に親子があらたまって話をするというのは難しいものです。ただこのことは、最も重要です。ご自身がどのように不動産を残してきたのか、または受継いできたのか、大事にしてきた思いや苦労、失敗、この先10年20年先はどう考えているのかなどをカッコつけずに話してみてください。 お子さん達は、本当は聞きたいと思っています。
そして話を聞いてください。不安や考えを聞いてあげてください。たとえ幼い考えでも。
④ 任せていく。
受継ぐ可能性があるのであれば、いつからではなくすぐにでも事業の一部を任せていってください。物件の電気メーターを見る仕事でもいい。銀行や管理業者と話す場面で同席させてもいい。まずは、かかわりを持たせてください。意識が劇的に変わります。
⑤ 誰に遺すかを決める。
具体的な行動として、遺言や認知症対策としての家族信託をやってみるのも一つです。
皆さんが思っているほどハードルが高いものではありません。考えや状況が変わればやり直せばいいのです。ただ、独りよがりのものではなく受継ぐ者と意識の共有を行ってください。万が一、受継ぐ者がいない。受継がない方がいいと考える場合には、売却ということを前提に動いていくことも必要になるでしょう。
準備不足でバトンタッチがうまくいかないのは、受継ぐ者が不動産賃貸経営に無関心であるか、無知がゆえに過度に悲観的であることが大半です。
そんなケースが少しでも減ることを心から願っております。
税理士法人ほはば代表の前田が執筆いたしました。
PROFILE
税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)
2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。
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