【08】大型修繕費との賢い付き合い方
ども、税理士法人ほはば代表の前田です。
令和3年分(2021年分)の所得税の確定申告の受付がスタートしました。申告期間は令和4年2月16日から3月15日までの1カ月間。
しかし、オミクロン株の感染拡大で申告等が困難な人を対象として、令和4年4月15日までは、簡易な方法での申告・納付期限の延長を申請できるようにすることを国税庁が発表しています。期限後に申告が可能になった時点で、申告書の余白等に「新型コロナウイルスの影響により延長を申請する」旨を記載したうえで提出すればよく、別途「延長申請書」を作成・提出する必要はありません。
とはいえ、2年続いた一律延長ではありませんので、令和4年3月15日を過ぎて申告する場合は、その日が納付期限となりますのでこの点ご注意ください。(令和4年2月17日時点の情報です。)
さて、確定申告時期には年に一度お会いするお客様の大家さんもたくさんいます。実家が増えたみたいに、久しぶりに顔を合わさせていただくと1年あった色々なお話を聞かせて頂きます。そんな中、よく質問されるのは大型修繕の申告の処理についてです。
そもそも、大型修繕特に外壁塗装工事や防水工事についてはその内容によっては、1000万円以上かかっても単年度で経費処理する可能な場合があります。こんな裁決があります。
平成元年10月6日裁決
鉄筋コンクリート造り店舗共同住宅の外壁等の補修工事に要した金員は修繕費に当たるとした事例
資本的支出(固定資産として減価償却する)と修繕費(その年の経費とする)の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものと解されるところ、本件建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入工事等は建物全体にされたものではなく、また、塗装工事等は建物の通常の維持又は管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、これらに要した費用は修繕費とするのが相当である。また、外壁天井防水美装工事は、補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるから、これに要した費用も修繕費とするのが相当である。
これは、納税者が税務署の決めたことに納得がいかない時に、国の第三者機関である国税不服審判所に調査・審理を申し出て判断された有名な裁決です。
つまり、いくら1000万円以上の外壁塗装工事や防水工事でも建物の通常の維持又は管理に必要な修繕であり、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるのであれば修繕費としてその年で経費に落としても構わないと言い換えられます。
ただ、不動産所得でこの修繕費の額を大きく上回る額を出している大家さんや、給与などでこちらも多くの金額を取っておられる方は、大きな修繕費を単年度で落とす方が有利なケースがありますが、不動産所得とその他の所得を考慮しても、単年度で大きな修繕費を引ききれないケースであれば、あえて固定資産として減価償却する方が複数年で見ると税金が大きく抑えられることがあります。
所得の多い少ない、引ける控除、あとリタイヤメントのタイミングなど全体のバランスを見て判断することになるのですが、その年が安くなればいい!そもそも1年で経費にできることを知らない大家さんもおられますので、処理を過去に遡って戻すことは難しいですから、大型修繕前のタイミングでは不動産経営に詳しい税理士に相談することをお薦めいたします。
税理士法人ほはば代表の前田が執筆いたしました。
PROFILE
税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)
2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。
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