【12】不動産の共有という節税と問題点
ども、税理士法人ほはば代表の前田です。今日は不動産の共有をテーマにお話ししたいと思います。
不動産の共有という言葉は、地主さんの間ではさほど珍しい言葉ではありません。例えば、賃貸マンションの建物・土地の所有権をご夫婦で1/2ずつ所有する状態などを言います。
不動産の共有が起こる時というのは、購入時に各々お金を出し合った割合で所有したり、所有権の一部を贈与したり、共有して相続したりといくつかのケースがあります。
ただこの共有という状態は、トラブルの原因となることが多いです。主な問題点としては以下の通りです。
●共有の主な問題点
①売却・管理の困難性
他の共有者と考えが合わない場合や、一部の共有者が所在不明の場合など、不動産の全部を売却することが困難になることや、持分の過半数の同意が得られないと賃貸借契約の解除、賃料の改定などもできないので、不動産管理に支障がでてしまうこと。
②賃料や費用負担をめぐる対立
共有の不動産が賃貸物件である場合は、賃料や費用負担の金額を巡ってトラブルになりやすいこと。たとえば、実際に賃貸管理業務に携わっている共有者が、ほとんど関与していない他の共有者から同額の賃料を求められても文句が言えないこと。
③共有物分割の請求というリスク
共有持分を買い取った業者等が他の共有者に対して共有物分割を請求し、話合いで解決しなければ訴訟に発展すること。訴訟では、ケースバイケースで適切な分割方法が検討されますが、たとえば、請求された共有者が持分を買い取る(全面的価額賠償)ための資力がない場合は、共有物全体を第三者に売却する(換価分割)などして最終的に当該物件を手放さないといけなくなること。
特に①は、賃貸経営にすぐさま影響があるので、共有者同士の人間関係が希薄若しくは悪化する可能性がある場合は、共有という状態は避けるべきです。
とは言え、悪いことばかりではありません。仲の良いご夫婦であれば賃貸不動産を共有することは、かえって大きな節税になる場合が少なくありません。
(具体例)
家賃収入が年間1800万円で経費が600万円の15室ある賃貸マンションをご主人が単独所有だった場合と奥さんと1/2ずつ共有だった場合を想定してみましょう。
単純に儲けは1200万円ですので、税負担はおよそ390万円ほどです。共有であれば、2人合わせて税負担はおよそ280万円になります。大きな節税ですね。
これは、所得税が累進税率つまり儲けが増加するほど、高い税率を課する課税方式をとっているためです。
また、青色申告をしている場合、事業的規模であり、複式簿記で記帳していれば最高55万円の青色申告特別控除が認められます。(事業規模でない場合は、10万円です。)
「事業的規模かどうか」の判断は、実質判断となりますが、目安として「5棟10室基準」というのがあり、概ね、これに該当すれば、「事業的規模」と判定されます。
具体例では、15室ですので1/2の共有であれば7・5室と判定するかと言いますとそれは違います。
各自の部屋数ではなく、建物全体の部屋数で判断できるのです。つまり15室で判断となり、55万円控除はご夫婦で各々適用可能となり更なる節税が可能となります。
共有は大きな節税効果を生むという側面もあるということを理解いただければ幸いです。
共有について民法の大きな改正が2021年(令和3年)にありました。適用開始時期は、来年の2023年(令和5年)4月1日からとなります。
❶共有物の変更に関するルールが明確化され たこと
❷共有物の管理に関するルールが明確化され たこと
❸共有解消のルールが整備されたこと
❹行方不明の共有者の持分を取得できる制度 が創設されたことが挙げられる。
とは言え、一度拗れた共有状態の解消は非常に困難であることは変わりありません。言い換えれば子供同士の安易な共有は避けるべきであることは間違いありません。
将来の方向性を考慮し誰の名義にするかを専門家を交え決めて頂ければと考えます。
税理士法人ほはば代表の税理士の前田が執筆いたしました。
PROFILE
税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)
2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。
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