【15】税制は毎年変わる。空き家の発生を抑制する税制の拡充と延長

ども、税理士法人ほはば代表の前田です。
税金の制度というものは、毎年改正されています。大きな改正から、小さな改正まで。年によってその変化は様々です。

不動産オーナー様に関係する令和5年度の税制改正としては、空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)の拡充・4年延長(令和9年12月31日)というものがあります。
この制度は以前からあるものですが、住宅売却の節税効果としては非常に有益なものなので抑えておきたい制度です。居住用財産つまりお住いのご自宅の売却では、3000万円控除という節税効果が高い認知度の高い特例があります。
似た制度として、相続した空き家にも厳しめですが要件を満たすと3,000万円控除の利用が可能です。相続した空き家の3,000万円特別控除は、平成28年度改正により導入された比較的新しい特例となります。
しかしながら認知度が低いことに加え、適用要件もやや厳しいため、残念ながらあまり利用されていない特例でした。
この改正、木造戸建て住宅の空き家が増えているといった社会問題が根底にあります。
放置された空き家は、倒壊などの危険性があり、犯罪の温床・放火の対象となる等の様々な問題を内包しています。

そこで、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が制定され、国が本格的に空き家の撲滅に乗り出しました。
その解決手段の一つとして、国としては平成28年度改正により、戸建ての空き家を処分しやすくするために「相続した空き家の3,000万円特別控除」を制定することとなりました。
ただ相続空き家の3,000万円控除では、売却する家屋が以下のやや厳しい要件を満たしていることが必要です。

【売却する家屋の要件】

①相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
②昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
③区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること
④相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
⑤相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
右記の①~⑤の要件を全て満たした家屋であれば、取り壊して売却しても3,000万円控除を利用することができます。

家屋を取壊して土地のみを譲渡する場合の要件は、以下の通りです。

【取り壊して売る場合の要件】

①取り壊した家屋について相続の時からその取壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないこと
②土地について相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
家屋の要件としては、「昭和56年5月31日以前に建築された家屋」、「区分所有建築物(マンション等)以外の家屋」であることの2つがポイントといえます。
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認申請を行った建物は旧耐震基準と呼ばれ、原則として現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしていない建物になります。

適用期限は、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間で、かつ、相続のときからその相続の開始のあった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したものに限られます。かつ譲渡対価の額が1億円を超えるものを除くとされています。

この制度、令和5年度の税制改正で前述の通り拡充・延長・一部強化が行われました。
・令和9年12月31日まで4年間延長する
・譲渡の時からその翌年2月15日までに、耐震基準に適合することとなった場合、あるいは同期間に取り壊し等がされた場合も認められる
・相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を2,000万円とする
・上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用する

実務的な見方をすると、この特例を使う場合、売主が耐震工事をしてから売る、あるいは更地にしてから売るというハードルがありました。今回の改正で買主が買った後に耐震工事を行う、あるいは更地にするという場合でも認められるということになるので、使い勝手が良くなりそうです。ただ取壊ししない場合、売買契約上は買主が耐震工事を期限内に行うことを条件にしておくなどの前さばきが必要になるため、不動産税務に詳しい税理士と不動産業者の連携が必要になります。該当しそうな方は、専門家に是非ご相談ください。

税理士法人ほはば代表の税理士の前田が執筆いたしました。

 

PROFILE

税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)

2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。

税理士法人ほはば
【東京本社】〒102-0083 東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル18F
【大阪本社・会計センター】〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2-4-13 6F
【福岡本社】〒810-0801 福岡県福岡市博多区中洲5-3-8 アクア博多5F
連絡先 TEL:06-6343-3838 FAX:06-6343-4848
http://www.hohaba.com/