【32】税務調査はどう選ばれる?AI時代の“見られる大家”の特徴
ども、税理士法人ほはば代表の前田です。
賃貸経営において、「税務調査はどのように選ばれているのか?」というご質問をいただくことがあります。実務の現場でも関心の高いテーマですが、結論から申し上げると、現在の税務調査は感覚ではなく、データに基づいて選定されています。
税務署に提出された確定申告書は、すべて「国税総合管理システム(KSK)」によりデータベース化されています。このシステムでは、過去の申告内容や調査履歴、同業他社との比較などを通じて、数値の異常や違和感を検出する仕組みが構築されています。
例えば、前年と比較して利益が大きく変動している場合や、特定の経費が急増している場合、あるいは同業平均と比べて所得率や経費割合が大きく乖離している場合には、システム上でアラートが上がると考えられています。
その上で、こうした候補の中から調査官が内容を確認し、税務調査の必要性が高いと判断された先に調査が入ることになります。つまり、「目立つ申告」であるかどうかが、ひとつの重要なポイントになります。
この仕組みを前提にすると、特に注意が必要なケースがいくつか見えてきます。
まず一つ目は、経費が突出しているケースです。
不動産賃貸業は、業種として経費の動きが比較的安定している傾向があります。その中で、交際費や交通費、修繕費などが大きく増加していると、システム上でも目立ちやすくなります。
もちろん、大規模修繕や突発的な工事など合理的な理由がある場合には問題ありませんが、その理由が申告書から読み取れない場合、「確認が必要」と判断される可能性が高まります。そのため、特殊事情がある場合には、青色決算書の備考欄などに内容を記載しておくことが有効です。
二つ目は、不動産所得が赤字となり、税金の還付が発生しているケースです。
特に給与所得のある方が、不動産所得の赤字と損益通算を行っている場合は、税務署としても慎重に確認する傾向があります。減価償却による赤字であっても、その計算方法や土地と建物の区分割合の妥当性などについては、細かく検証されることがあります。
さらに、前年分の税額を取り戻す繰り戻し還付を行った場合には、税務調査の対象となる可能性が高くなるため、事前に資料を整理し、説明できる状態を整えておくことが重要です。
三つ目は、不動産の売却があったケースです。
不動産の譲渡は分離課税となり、通常の所得とは別に計算されます。このため、資産課税部門で専門的なチェックが行われることとなり、取得費や譲渡費用、減価償却の計算など、多くの論点が精査される可能性があります。売却があった年は、通常以上に慎重な申告が求められます。
また、今後は「KSK2」と呼ばれる新たなシステムの導入も予定されており、AIによる分析精度はさらに高まると考えられています。これにより、単なる数値の増減だけでなく、申告全体の整合性やパターンといった観点からもチェックが行われる時代になっていくでしょう。
税務調査は、必ずしも不正を疑われているから行われるものではありません。税務署の立場から見て、「確認が必要」と判断される申告であるかどうかが重要になります。
逆に言えば、数値の変動に合理的な理由があり、それを説明できる状態にしておくことで、税務リスクは大きくコントロールすることが可能です。
賃貸経営においては、税務も重要な経営要素の一つです。短期的な節税だけでなく、長期的に整合性のある申告を意識することが、安定した経営につながります。
税金って、知れば知るほど面白いものですね!税理士法人ほはば代表の税理士の前田が執筆いたしました。
PROFILE

税理士法人ほはば 代表税理士
前田 興二(まえだ こうじ)
2011年10月に税理士法人ほはばを設立し、同法人の代表に就任。税理士業界ではじめて日本マイクロソフト社にそのIT活用の事例取材を受けるなどITを活用し、お客様の経営コストの削減と業務の効率化を徹底的にサポート。不動産オーナーや法人関与先数は400を超える異例の支持を受けている。不動産オーナーに対し、不動産管理会社の設立による節税をはじめ、相続を見据えた生前の不動産対策を提案をすることで更にその支持が広がっている。
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